インフルエンザはインフルエンザウイルスの感染によっておこる急性の呼吸器の病気です。
インフルエンザウイルスはA型とB型とC型があります。最もよく流行するのがA型で、B型は変異の頻度が少なくてA型に比べて広がりにくく重症度も低いと言われています。C型はあまり症状を引き起こしません。
患者の気道分泌物がインフルエンザウイルスを含んだエアロゾルとなって気道から侵入します。気道表面の細胞や肺胞の細胞などに感染して4-6時間でウイルスが増殖して周囲の細胞にどんどん感染していきます。これによって指数関数的にウイルスが増殖していき、急性の呼吸器感染症となります。
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せきやのどの痛み・発熱以外にも頭痛・さむけ・筋肉痛・関節痛・だるさなどのさまざまな症状を起こします。
通常であれば5日以内くらいで改善しますが、高齢者などでは回復がおくれてだるさが数週間続くこともあります。
肺炎・脳症・筋炎などの合併症をおこすとけっこう大変です。
肺炎はインフルエンザウイルス自体が起こすものと、その他の細菌などが感染しておこる二次性細菌性肺炎があります。多くは数日で一旦よくなりかけたと思ったら、また発熱・たん・せきなどがでてきます。肺炎球菌・黄色ブドウ球菌・インフルエンザ菌などによって引き起こされます。
脳症はインフルエンザ感染によっておこる急性の意識障害をおこす脳の病気です。けいれんや意識の障害・異常行動などがおこります。異常行動とは、その場にいないもの(動物やキャラクター)が見えたり、家族のことがわからなくなったり、意味不明な言葉を発したり、何かにおびえたりするなどが報告されています。急性期の死亡率は7%、重度の後障害が8%、軽度・中等度の後障害が8%となっていて非常にこわい合併症と言えます。
インフルエンザの診断は迅速診断キットでおこないます。多くの人が受けたことのある「鼻に細い棒をつっこまれる」あれです。
しかし、あの検査は実は欠点があります。むずかしい言葉で言うと検査には感度と特異度という考え方があります。100%正しい検査なんて実はあまりなくて、どれくらい正確な検査なのかをあらわすのに感度と特異度と言う考え方をつかいます。感度とはインフルエンザにかかっている人のうちどれくらいを陽性って当てることができるか、特異度とはインフルエンザにかかっていない人のうちどれくらいを陰性って当てられるかという割合のことです。
「検査なんだから、陽性ってでたらインフルエンザにかかっているんだろうし、陰性ってでたらかかってないんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、じつは検査は見落としもあって、インフルエンザにかかっているのに陰性になったり、かかっていないのに陽性になったりすることもあります。
では実際にインフルエンザ迅速診断の感度と特異度はどうかというと、感度は62%、特異度98%です。つまり、インフルエンザにかかっている人の38%(100-62=38%, およそ40%)の人は見落としますよということです。ただし、インフルエンザにかかってない人のことは98%の割合で言い当てますということです。
これでは結果の判定には役立ちません。
つまり、陽性ですっていう結果だったときに本当にインフルエンザにかかっているのか、かかってないのに間違って陽性になっているのか、どっちなのかが患者さんも医者も一番知りたいところです。
陽性ですっていう結果だったときに本当にインフルエンザにかかっている確率を陽性的中率と言います。これは病気がどれくらい起こりやすいか(有病率)によって変わりますので、その時のインフルエンザのはやり具合によってかわります。はやっているときほど当たりやすいです。
インフルエンザの検査はこのように問題も多いですが、はっきりとわかりやすいことと5-15分程度の短時間で結果が判明することから、多くの医院・病院で行われています。
しかし、近年では、今までの鼻から細い棒を入れてぬぐった液で検査をする抗原検査の他に、口の中をカメラで写してインフルエンザの診断をおこなう「内視鏡用テレスコープを用いた咽頭画像解析」という検査があって、当院でも導入しています。
これは口の中の写真を撮って、「AIがインフルエンザかどうかの診断をおこなう」という検査で、保険診療として認められています。
保険点数(305点)は今までの迅速検査キットを用いた検査点数(301点)とほとんど同じですが、以下のような利点があります。
症状が出た直後でも有効で、苦痛がほとんどない検査ですので、当院ではインフルエンザを疑った場合にはこのカメラで口の中を写す検査を中心におこないます。
ただし、欠点もあります。口を開けられなくて口の中の写真が撮れない場合には検査ができませんので、これまでの抗原検査が必要です。また、今のところインフルエンザにしか使えませんので、コロナも疑ってどちらも検査したい場合には、1回の鼻からのぬぐい液採取で同時に検査ができますので、これまで通りの鼻からの抗原検査でいいと思います。発症早期 12時間以内であれば、カメラの検査(インフルエンザ)+鼻からの抗原検査(コロナ)がいいと思います。
インフルエンザの治療薬としてはタミフル(飲み薬)・ゾフルーザ(飲み薬)・リレンザ(吸入薬)・イナビル(吸入薬)・ラピアクタ(注射薬)などがあります。
いずれも症状がよくなるまでの期間が半日〜1日程度短くなります。
そのため、かかってから数日してから投与してもあまり有効ではないかもしれません。
ラピアクタは内服ができないような重症患者に使うことが多いのでクリニックなどではあまり使わないかもしれません。
また、治療ではありませんが、家庭内でインフルエンザの患者がいる時に、インフルエンザにかかっていない人にこれらの治療薬を投与することでその人がインフルエンザにかかることを予防することがありますが、これは予防接種などと同じく保険診療ではなく、自費診療となります。
また、当院では小児は中学生以上を診察対象としています。中学生になられていない小児の方は小児科の受診をお願いします。ただ、小学生であってもけがやきずの処置なら可能ですのでご相談ください。
ハリソン内科学第15版
インフルエンザ脳症の診療戦略
CDC Seasonal Flu Vaccine Effectiveness Studies
クリニック名 | 二ノ切やまもとクリニック |
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